大切な仕事である体位変換の目的
介護士の仕事では、寝たきりの高齢者を介助するシーンも珍しくありません。
その中でも特に頻度が高いのは、ベッド上の体位変換でしょう。
高齢者の場合、筋肉や骨の萎縮をはじめ関節の拘縮または変形、さらに心肺機能や認知機能の低下によって、寝たきりの状態になるケースが多々あります。
このような寝たきりの高齢者は、食事や入浴あるいは排泄といったあらゆるADL(日常生活動作)を、自分で遂行する力がありません。
それどころかベッド上での寝返りや起き上がりさえ、不可能な状態にあります。
そこで介護士の仕事ではADL介助の一環として、ベッド上での体位変換も行います。
そもそも体位変換をする主な目的としては、褥瘡の防止にあります。
人間は睡眠中でも身体が局所的に圧迫しないように、無意識のうちに寝返りを繰り返しています。
しかし寝たきりの高齢者ではこれができないため、寝具と接触している身体部分が常に圧迫状態になります。
その結果、皮膚組織の循環障害から発赤や腫脹、そしてびらんや潰瘍へと進行し、最悪のケースでは壊死にまで至ります。
この一連の過程こそ、いわゆる褥瘡と呼ばれる症状です。
介護士の仕事では寝たきりの高齢者が褥瘡を発症しないように、圧迫を受ける全身あるいは局所の清潔を維持しながら、こまめに体位変換をすることが求められます。
なお体位変換の際には、意識が不明瞭な高齢者に対しても、必ず声をかけてから実行します。
また高齢者が抱える障害や苦痛にも配慮し、安全で丁寧な体位変換を心がけることが肝要です。